AIに「こんなアプリを作って」と頼み、会話をしながらコードを書いてもらう。
いわゆる「バイブコーディング」が広がり、プログラミング経験が少ない人でも、自分のアイデアをアプリの形にできるようになりました。私自身もAIと相談しながら、デスクトップマスコットアプリ「MADOCHI」の開発を進めています。
そんななか、最近目にするようになったのが「ループコーディング」という言葉です。
なんとなくコードを書き続けるという意味ではありません。簡単に言えば、AIにコードを書かせるだけでなく、実装、テスト、エラーの確認、修正という一連の作業を繰り返させる開発方法です。
バイブコーディングとは何が違うのか
バイブコーディングでは、人間がAIとの会話を通して開発を進めます。
たとえば、こんな具合です。
画面の右下にキャラクターを表示して。
少し大きすぎるから小さくして。
Windowsでエラーが出たので直して。
AIがコードを書き、人間が動かして結果を確認し、問題があれば再びAIに伝えます。つまり、実装と修正のループを回しているのは人間です。
一方、ループコーディングでは、人間が最初に目的と合格条件を設定します。
Windows版が正常に起動すること。
自動テストがすべて成功すること。
エラーが発生した場合は原因を調査し、修正してもう一度テストすること。
このように指示すると、AIはコードを書いて終わるのではなく、次の流れを繰り返します。
- コードを実装する
- アプリを起動し、テストする
- エラーやテスト結果を確認する
- 原因を分析して修正する
- もう一度テストする
この輪、つまり「ループ」を、合格条件を満たすまで回すのがループコーディングです。「ループエンジニアリング」や「エージェントループ」と呼ばれる場合もありますが、まだ新しい言葉なので、厳密な定義は固まっていません。
人間が確認しなければ分からないこともある
ここで注意したいのは、ループコーディングが「人間は何もしなくてよい開発方法」ではないことです。
AIが自動的に確認しやすいのは、次のような項目です。
- アプリが起動するか
- テストが成功したか
- エラーログが出ていないか
- 計算結果や保存結果が仕様どおりか
- CPUやメモリの使用量が基準内か
しかし、実際に人間が見たり触ったりしなければ分からないこともあります。
- 画面の位置や大きさに違和感がないか
- ボタンが押しやすいか
- アニメーションが自然で、キャラクターらしく見えるか
- 音量や動作のタイミングが心地よいか
- 特定のパソコンや周辺機器で問題なく動くか
- 数値では表せない「なんか変」がないか
たとえばMADOCHIで、AIが「キャラクターを画面右下に正しく配置できた」と判断しても、実際にはタスクバーに少し重なっているかもしれません。
歩行アニメーションも、データ上は正常に再生されていても、人間が見れば「動きが硬い」「この揺れ方はキャラクターらしくない」と感じることがあります。かわいさには、まだ自動テストがありません。
現実的なのは「人間を含んだループ」
実際の開発では、AIだけですべてを回すよりも、途中に人間の確認を入れる方法が現実的です。
- AIが実装する
- AIが自動テストを行い、問題を修正する
- 人間が実機で見た目や操作感を確認する
- 人間が違和感や要望を伝える
- AIが再び修正とテストを行う
この方法なら、機械的に判定できる作業はAIに任せつつ、人間は判断が必要な部分に集中できます。
AIに指示するときも、次のように伝えておくと安全です。
自動テストできる部分は、合格条件を満たすまで修正と検証を繰り返してください。見た目、操作感、音、実機での動作など、人間の確認が必要な項目は確認方法を提示し、私の判断を待ってください。
これなら、AIが確認できない部分まで勝手に「完成」と判断することを防げます。
ループコーディングの利点
ループコーディングの大きな利点は、単にコードを書く速度が上がることではありません。
何度も発生する確認と修正をAIに任せられるため、人間は「何を作るのか」「何をもって完成とするのか」という判断に集中できます。
特に、次のような作業と相性がよさそうです。
- エラーの原因調査と修正
- 複数環境での動作確認
- テストの追加と実行
- 表示速度や処理速度の改善
- コードの整理
- 既存機能を壊していないかの確認
ただし、合格条件が曖昧だと、AIは間違った方向へ修正を繰り返す可能性があります。また、テストそのものが間違っていれば、テストに合格していても正しいアプリにはなりません。
だからこそ、人間には「コードを全部書く能力」だけでなく、目的を決め、結果を見て判断する力が必要になります。
バイブコーディングからループコーディングへ
バイブコーディングとループコーディングは、どちらか一方を選ぶものではありません。
新しいアイデアを試したり、見た目や使い方を相談したりするときは、AIと会話しながら進めるバイブコーディングが向いています。
一方、目標が決まったあとの実装、テスト、修正には、ループコーディングが力を発揮します。
つまり、現実的な使い方は次の組み合わせです。
人間とAIが会話して方向を決める。
決まった作業はAIがループして仕上げる。
最後に人間が実際に見て、触って判断する。
ループコーディングは、人間を開発から追い出す仕組みではありません。人間が何度も行っていた機械的な確認をAIに任せ、人間にしかできない判断へ集中するための仕組みです。
コードを書けない人でも、AIと一緒にアプリを作れる時代になりました。そしてこれからは、AIに一回ずつ指示するだけでなく、「どうすればAI自身が検証と修正を繰り返せるか」を考える時代になりそうです。
私もまだバイブコーディングの真っ最中ですが、少しずつAIにループを任せていこうと思います。
もっとも、MADOCHIのキャラクターが本当にかわいいかどうか――その最終テストだけは、当分人間の担当になりそうです。

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