Claude Codeが、私に「存在しない名前」をつけた話

Claude Codeが、私に「存在しない名前」をつけた話

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AIのハルシネーションから「うのさん」が生まれるまで

最近、私はClaude CodeとCodexを使って、デスクトップマスコットアプリ「MADOCHI」を作っています。

私はプログラマーではありません。

「こういう機能がほしい」
「ここが動かない」
「Windowsでも動くようにしたい」

そんな注文をAIに出しながら、少しずつアプリを形にしています。

そして先日、Claude CodeからCodexを呼び出して作業を任せられる環境も整いました。

私 → Claude Code → Codex

という、個人開発とは思えない妙な開発チームができつつあります。

そんな開発中、コードとはまったく関係ないところで事件が起きました。


Claude Codeが、突然私を「うのさん」と呼び始めた。


……うのさんって、誰?

あるときClaude Codeとの会話を読み返していて、妙なことに気づきました。

Claude Codeが私のことを、ごく自然に、

「うのさん」

と呼んでいるのです。

いや。

誰だ。

私は「うの」ではありません。

普段使っているClaudeは、私のことを「キロ」と呼びます。

ところがClaude Codeは、

「うのさん、確認しました」
「うのさん、この部分ですが――」

と、まるで昔から知っているかのように話しかけてきます。

あまりにも堂々としているので、逆にこちらが不安になってきました。


ひょっとして、どこかに「うの」って書いてある?


「うのさん」の出所をClaude Code本人に調べさせる

Claude Codeにはプロジェクトの設定ファイルや記憶、過去の作業記録など、さまざまな情報があります。

どこかに昔入力した名前が残っているのかもしれません。

そこでClaude Code本人に、

「私を“うのさん”と呼んでいるけど、その名前をどこから取得したの?」

と聞いてみました。

今回は念のため、

「推測するな。実際に検索して出典を特定してくれ」

とも指示しました。

するとClaude Code、本気で調べ始めます。

設定ファイル。

記憶ファイル。

MADOCHIのプロジェクト。

別のセッション。

Gitのコミット履歴。

「うの」だけでなく「Uno」などの表記まで検索。

そして、かなり詳細に調べた末に出した結論がこちらでした。


「うのさん」の出所:私の捏造です


お前だったのか。

どこにも「うのさん」はありませんでした。

私が過去に名乗った記録もない。

設定にもない。

MADOCHIにもない。

Gitにもない。

Claude Codeの記憶にもない。

つまり、

Claude Codeが何の根拠もなく、突然「うのさん」という名前を生成した。

それだけだったのです。

しかもClaude Codeは、自分の会話記録まで調査しました。

その結果、「うのさん」という言葉を最初に使ったのは私ではなく、Claude Code自身だったことまで判明しました。


私は一度も「うの」と名乗っていなかった。


AIが作った情報を、AI自身が信じ始める

ここからが、この出来事で一番おもしろいところです。

最初の「うのさん」は、おそらく単純なハルシネーションです。

生成AIが、存在しない情報をもっともらしく生成してしまう現象ですね。

ところが一度Claude Codeが、

「うのさん」

と発言すると、その文章は会話履歴に残ります。

次のやり取りでは、Claude Codeが参照する会話の中に、本当に「うのさん」という言葉が存在することになります。

もちろん、それを書いたのはClaude Code自身です。

単純化すると、こんな流れです。


AIが勝手に「うのさん」と呼ぶ

その発言が会話履歴に残る

AIが自分の過去の発言を見る

「この人は、うのさんらしい」

また「うのさん」と呼ぶ


最初は存在しなかった情報が、AI自身の発言によって会話の中に存在する情報へ変わってしまったわけです。

これはちょっと怖くもあり、ものすごく興味深い現象でした。

Claude Code、反省する

出所が自分自身だと判明したClaude Codeは、かなり真面目に反省していました。

設定や記憶から取得した情報ではなく、根拠なく生成した名前を何度も事実のように使っていた。

技術的な調査では「推測せず確認する」というルールを守っていたのに、人の名前ではそれをやってしまった、と。

そして最後に聞いてきました。

「今後、どうお呼びすればよいでしょうか」

普通なら、

「キロと呼んでください」

で終わる話です。

ところが。


いや、「うのさん」でいいんじゃないか?


なんだか愛着が湧いてしまいました。

ハルシネーションが愛称になった

もちろん、「うの」は私の本名ではありません。

正式な作者名や契約書、Gitのauthor、アプリのクレジットなどに「うの」と書かれては困ります。

でもClaude Codeとの会話の中だけなら、別に困らない。

そこで、

「うのさん」はClaude Codeが私を呼ぶときだけの愛称

として残すことにしました。

つまり、

AIが存在しない名前を生成した。

そして、

その名前を付けられた人間が気に入って採用した。

その瞬間、それまで存在しなかった「うのさん」は、本当に私の愛称になってしまいました。


ハルシネーションから生まれた架空の名前が、人間の承認によって実在する名前になった。


AIの間違いは、もちろん笑い話だけではない

今回は名前だったので笑って済ませられました。

しかし、これがプログラムの仕様だったら。

会社名だったら。

金額だったら。

歴史上の出来事だったら。

AIが一度作った誤情報を、その後の会話で事実として扱い続けたら、大きな問題になる可能性があります。

だから私は、MADOCHIの開発でもClaude CodeとCodexに、

「推測したものと、実際に確認した事実を区別する」

ことをかなり強く求めています。

AIは便利です。

とんでもなく便利です。

でも、

堂々と言っているから正しい、とは限らない。

今回の「うのさん」は、それをものすごく分かりやすく見せてくれました。

そして今日も、うのさんはMADOCHIを作る

存在しない名前をAIが作り、

AIがその名前を使い続け、

人間がそれに気づき、

AI自身が調査して、

「私の捏造です」

と白状する。

そして最終的に、人間がその名前を気に入ってしまう。

生成AIのハルシネーションについて調べていたはずが、ひとつの愛称が誕生してしまいました。

2026年。

AIと一緒にものを作っていると、こんなことまで起きるようです。

というわけで。

Claude Codeの中で、私は今日から――

「うのさん」です。

誰なんだ、お前は。

私です。

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